categoryスポンサー広告

スポンサーサイト

trackback--  comment--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
category日記

3日目

trackback--  comment--

朝を知らせる雀の囀りで意識が覚醒する。
久しぶりに昔の夢を見た。
もう10年も前、兄が自身に言った言葉。
最後まで言った筈の言葉は、途中までしか覚えていない。
掌で高い体温をもった額に触れてみる。

「なにを言ってたんだっけ。」

記憶を探ってみるが鳥頭なのでろくすっぽ覚えていない。
視線の先は夜が明け始めた空を見ていた。



欠伸を噛殺し自身の仕事を行う。
自身が所属している一座はグランギニョル。
人を殺す事をショーとし、そういった嗜好を好む貴族を相手に商売をしている。
あちこちの街を転々とし、今回も人里離れた一軒の家を襲い拠点にした。
勿論元の住人は即座にその日の夕飯になったが。
畳み式の檻の手入れを簡単に済ませる。
近々ショーを開催する、今日はその材料となる人を攫いにいかないといけない。



既に時刻は夜、自身は時計をもっていないため正しい時間はわからない。
そろそろ人の気配が少ないのを見るともう大分遅いのかもしれない。
人攫いの作戦はこうだ。
人通りの少ない路地の壁際に身を潜め、通りがかった人の背後をガツリと棒で殴る。
昏倒している内に猿轡と縄で縛れば後はもう運ぶ荷物だ。
いつもこうやってきた、だがたまに勘の鋭い奴もいる。
故にペアでの行動は基本だった。
鳥目のナナにとってもそれは有難い仕事だった。
何往復か、重い荷物を荷台へと運び一息ついていると肩を緩く叩かれる。

「ねぇ、ねぇ。
 なんであんた仕事しないのさ。」

「仕事はしているだろ。」

「違うわよ。
 ”人を殺しているか”って聞いてんの。」

耳障りな高い声だった。眉根を寄せ短く返答をする。
ナナのペアは新入りで猫の獣人だった。
どこぞの貴族の愛玩用として飼われていたが、彼女自身MよりもS気の方が強かったようだ。
日に日に下克上への意識が溜まり、大事な部分を切り落として脱走したそうだ。
口癖は「男は●ね!」、1日に何回かは耳にしている。

「やる気がないだけだ。
 君が気にするような事じゃない。」

「あっきれたぁー
 なんでそんなんでこの座に居ついていられるのか不思議よ。」

ご自慢の踝まであるプラチナブロンドを指で解かしながら
さも理解出来ないといったように頭を振ってみせる。
彼女は一座の思想と自身が殺人を犯せるという事に至極のプライドと喜びを持っているようだ。
視線は見下したものを含んでいた。

「わかったわ。
 見てなさいよ。ワタシがいかに人を殺すのが楽しいか教えてあげるわ。」

プラチナブロンドの頭にある小さな獣の耳がピクリと動く。
遠くから人の足音が聞こえてくると同時その声色はとても小さくなった。
人影が通り過ぎると同時、彼女は飛び出し手に持った棒でその背へと殴りかかった。



「復帰は絶望的ねぇ。」

婦人服のようなものを着たシャム猫の獣人が遅く「にゃ」と鳴いてみせる。

「両腕だもんな。」

ナナも適当に相槌を打ち、寝台の上に寝転がる彼女を見た。
綺麗なプラチナブロンドはいまや自身の血で汚れ赤黒いものに変色している。

「誰のせいでこんなことになったと思ってるのよ!」

「頼みもしないお節介で調子にのってたお前のせいだな。」

彼女は確かに人を襲いはしたがどうにも相手が悪かったようだ。
両腕を切断され今に到っている。
ナナに刃は向くこと無くそのまま逃げ去ってくれたのは唯一の幸いかもしれない。
今にも一方的な口喧嘩に発展しそうな気配、ねこ先生は軽く手を叩き興味を自身へとそらす。

「ナナ、これは関わっていたお前にも責任があります。
 二つ選択肢を選ばせてあげましょう。」

子供を諭すような声色で一本と指を立ててみせる。

「一つ。彼女の役割を請け負う。」

「嫌だ。」

首を振ってはっきりと拒否の意を示す。
事前に想像していたのか、ねこ先生は小さく笑い二本目の指を立ててみせ。

「二つ。私のお使いをしてもらう。」

「お使いってなんだよ。」

ねこ先生の「おつかい」。
漠然とした用事に思わずそんな質問をしてしまう。

「ハワード・アイゼンを殺してきて。」

「はぁ?」

久しぶりに聞いた名前に思わず間の抜けた声が上がる。
ねこ先生の話はこうだ。
ハワード・アイゼンはいま親の家業を継いで取締になっているという。
ねこ先生は彼のコネクションが欲しい。
だが一度ねこ先生はハワードとの約束を裏切っているため接することも出来ないという。
ならば近しい存在である自身を利用するのが一番だ。
ナナは暫し考えるように足元に地面を落とす。
腰のベルトに繋げたランタンが移りそちらへと視線を。
ガラスの表面には灯りを切らすことなく水面を漂う爛々とした眼球があった。

「こんな脅迫してもお前は何も思わないだろうけど
 もしこの二つどちらか嫌だという場合は……夕飯にでもなって貰おうかしら?」

ねこ先生は嘘はあまりつかない。
特にこんなジョークは本気で実行している事が多い。
喰うのなら喰われるのだろう。
別に自身の生に執着はない、だが一つ気がかりなのは手元にあるランタンだ。
自身が死ねば当然誰かの手の元に渡るだろう、けれど何故だかそれは嫌だとはっきりと感じている。
小さく息を吐き、ねこ先生へと視線を向ける。

「わかった、先生のおつかいをやるよ。」

「良い子にゃ。
 今日はお別れパーティーをやりましょう。」

上機嫌でねこ先生は外へと続く扉へと足を運び。

「ああ…その剣で言い忘れていた。
 お前の兄は随分昔からお前を見つけてはいたにゃ。」

思い出したように声を上げナナ達へと顔を向ける。
寝台へと寝かせている新人へと視線を落とし。
再度笑って見せた。

その後お別れパーティーと共に新人が料理に出されていたのも日常茶飯事だった。
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。