categoryスポンサー広告

スポンサーサイト

trackback--  comment--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
category日記

32日目

trackback--  comment--


カツオが布団に潜り込んでしまうとあっという間に寝息が立っていた。
"話がある"と、言っていたがカツオはボクが約束を破った事を知っているんだろうか。
ベッドに乗り上げカツオの寝顔を確認してみる。
うむ、いつも通りの無防備の寝顔だ。これなら多少物音を立ててもガンとして起きないだろう。
寝台から下り今度は扉へと向かい鍵をかけていないか確認をしてみる。
無用心な事にそれはいつでも開けられる状態だ。

「いつでも逃げれるじゃん…。」

思わずそんなぼやきが出る。
こいつはこのままボクが居なくなる事を考えなかったんだろうか。
でも…なんで泣くんだろう。
ろくに睡眠もとれていない状態では思考もよく回らない。
気づけば扉に背を預けたまま強かに船を漕いでいた。
知ってる奴に会った安心感から急に疲労が沸いたんだろう。
多分このまま外に出てもそのうち眠気に負けて地面に突っ伏すような気がしないでもない。
別にかまわないが居なくなったら居なくなったでカツオが羞恥をかなぐり捨てた行動に出るし…あ、考えてたら余計眠くなってきた。
扉を閉めなおして洗面所に入ると数日同じものを着ていたせいで衣類が随分と土で汚れていた。
ヒョーゴから貰った上着は洗って繕えば元に戻るが服のほうは若干上質なものを使っていた分どうにもならないだろう。
服を脱ぎ勝手に風呂を使わせてもらった。
着る服がないが寝る分には問題あるまい、もう一度カツオの寝顔を見てみる。
いつもと変わらない平凡な寝顔だった。
起きたら言わなくちゃいけないんだろうか。
でもきっとこれが最後なんだろうなあ。
そう考えながら布団へと潜りこむと、睡眠はすぐに来てしまった。





どれくらい長く寝ているかわからないが、肩を揺さぶられる感覚に少し意識が覚醒する。

「………おい、おい、起きろ。痴女起きろ。
 服着れ痴女。あと飯食おう飯。冷蔵庫に適当に食い物あっから。」

カツオが先に起きたらしい。
目がろくすっぽ開かないが甘い香りが漂っている。
多分お菓子を使って肩でも押しているんだろうか。
噛み付いてみるとそれは妙に柔らかかったり骨ばったものだった。

「お菓子ならそこにあるだろぉ…」

「いてぇいてぇ俺は菓子じゃありませんいてぇ
 確かに俺の部屋だけに菓子ならどこにでもあっけどお前も何か食うだろ菓子でええのんか」

………嗚呼、そうだった。カツオの部屋に世話になっていたんだった。
幾分幸せな寝心地が一気にテンションがさがってしまった。
おかげで食欲も引っ込む。いらないと言うとカツオは大人しく引き下がってくれた。

「……そうか?まぁあとで食えば良いか。
 はーしかし何かすげーよく寝た……お前もよく寝とったなぁ。」

「普通だろー。カツオはいつもいっぱい寝てるのにぜんぜん寝飽きることが無いよな。

 あー……はあ…。」

欠伸交じりにため息も出た。
眠気にかまけてぐだぐだとしているとカツオはお菓子を食べる事を止めてクローゼットへと向かっていた。
なにしてるんだこいつ。
そうして見守っていると上着を一着投げられていた。

「そうか?俺が他人の寝顔見れるのがレア過ぎてだな、
 あと寝飽きる何て事が起こる筈がないだろ常識的に考えて。
 とりあえずこれ着れ、これ。」

「ボクが寝にきて起きてもずっと寝てるもんな。
 寒くないのになあ…でも着ないとカツオうるさそうだなあー…」

軽いやりとりをしながら受け取った上着を見る。
うわー、着るのもめんどくせー。

「寝に来て帰っている様を一度も見た事ねぇパネェ。
 俺ぁうるせぇ奴なンだよ諦めろ、んで茶ぁ入れたら飲みながら話すっからな。」

露骨に面倒くさそうな態度をとったが許してはくれないらしい。
同時に釘を刺されてしまった。
大変だ、逃げ場がない。

「だめだこいつ早くなんとかしないと。
 なんだよぉ別にカツオの***ピクリともしねーだろーし
 このままでもいいじゃ…えー…話さないとだめ」

「マジだ俺早くなんとかされないと。
 おいおめーやめろおいそういう言葉を女の子が使うんじゃねぇおい
 駄目だ、俺お前と話す為に探していたんだからな。 」

カツオはよくボクが暴言を吐くと"女の子が"と使う時がある、正直これから生きていく上でもこれを直す気は更々なかったりする。
なにか頭を押さえつけられているようで嫌なのだ、かといって…これからがあるかは知らないが。
カツオは確りと自分の話に戻し始めている。
あ、ダメだこれ…。
思わず布団に転げて逃げていた。

「別にいーじゃん。カツオにはどうでもいいことじゃん。
……それなのに探してたのになんでゲロとか泣いてたのか。なんかあったのか?」

情けないこの話は本当にしたくない、露骨に見えるかもしれないがあえて先ほどあった事を振ってみたが。

「よくねぇ、俺は前に女らしくしろ言ったからな。
人にはゲロ吐きながら泣く事もあるもんだ、それよか今はお前の話だろ。メイガスさんから聞いたぞ。」

効果は薄い様だった。それに責任感まで搭載されている。

「女らしくしてなんになるんだ、弱いだけだろ。
ボクはゲロとか初めて聞いたぞ。う……。」

途端目頭が熱くなり唸るしか出来なくなる。

「う゛ー…。」

視界は見る見るうちにぼやけていた。
泣いてなんかないし。鼻水が目から出ただけだし。
落ち着かせようとしたのかカツオはボクの頭に掌をおいていた。
多分宥めようとしているんだろう。

「……大体聞いた、けどお前は別にあそこから逃げ出さなくても良かったんだよ。」

「…。だってカツオとの約束破ったし、兄…あいつ殺そうとしたし。それに…。」

口篭っているとカツオは不思議そうにしている。

「…?メイガスさん死んでねぇのに約束は破ってねぇだろ。
 それになんだ、今更隠すものもないだろ。」

「でも怪我させたし…。
 隠してるんじゃなくて気持ち悪いんだ、善人ぶって仲間ですよーって
 言っておいて陰でこそこそする。大人気持ち悪い。」

本当にあの時は殺すつもりだったのだ、だからカツオや皆とも別れるつもりでいまここにいるというのに
目の前の男はそうじゃないという、よくわからない。
それにあの男の件もあるのだ、考えるだけで堪えもわからなくただただ頭を抱えていたくなる。

「怪我した位じゃ死なねぇだろ、それに結局お前は殺さないっていう選択をしたんだろ。
 ならそれが結果だ。…大人気持ち悪いってのはメイガスさんの事か?」

「…約束破ってない?
 ………うん。    きらい。」

はっきりと嫌いと述べながら布団の中にもぐりこむ。
隙間からカツオの顔色を伺ってしまう。そうしているとカツオは迷う事無く頷いてみせるのだ。

「ああ、破ってねぇよ。お前は本当に凄い奴だ、俺はお前の事尊敬する位だ。」

本当にそうだろうか。
今までの事を考えればろくでもないことばかりしている。
嘘を吐き人を殺し人を傷つけてもきた。友達にも嘘をついている。
褒められない。

「…なぁ、その反応っつーのはメイガスさんがお前の事信用してないから
 見張っておけって言ったと思ってるんだよな? 」

自然と声色は鼻声になってしまっていた。
多分布団も被っている、聞き取りづらいだろう。

「凄くない、本当は殺すつもりだったし。カツオやヒョーゴにもうそついてたもん。

 …うん、言った。」

「結果が全部だろ、絶対嘘つかない奴もいねぇしそんな気にする事じゃねぇ。
 ヒョーゴだって嘘よかお前が居なくなる方がよっぽど悲しいと思うけどなぁ
 あとメイガスさんのソレな、俺も話聞いたけどお前の事を信用していないから
 そう言った訳じゃねぇんだよ、寧ろその逆でお前を心配しての事だったんだ。
 ただ言い方は誤解させる言い回しだったから良くなかったなと俺も思ったけどな。」

カツオが言うにはついて良い嘘もあるらしい、難しい事を言う。
ヒョーゴには一応予防線をはっておいたのだ。

「ちゃんとトマト投げ祭りに行くっていったもん。だってそうするしかなかったんだもん…。」

少しカツオから微妙な空気が漂ったがこれしか思いつかなかったのだ、仕方がない。
でもヒョーゴが悲しんでしまうのはボクも不本意だ。
でもでもそうしないと駄目なのだ、ねこ先生との約束もあった。
最初からそう決まっていたのだ。
考えれば考えるほど頭がごちゃごちゃしてくる。
それと同時に目元が熱くなって何を言って良いかわからなくなる。
それでもなにか言わないといけない。

「ボクだってヒョーゴとお別れはやだよぉ、
 でもやんないと猫先生がヒョーゴの所にいくって。なにするかわかんないんだもん。
 …わかんないだろ。だって人を売ってた商人だぞ、
 後悔してるっていうのもフリかもしれないじゃないか。」

言い出すとそれは止まらなく泣き声と一緒にわあわあと出てくる。

「もう道具に使われるのやだぁぁああ。」

嗚呼、そうか。
ボクは結局、人に対して存在意義を見出していたのだ。
メイガスがボクに対して"監視"という言葉を使った時、酷く動揺したのだ。
だから嫌いになっていたのか。

「トマトはこの後どっかで投げれば嘘じゃなくなるし、それも何とかすりゃ解決だな。
 いやもしかしたらもう解決してるかもしれねぇけれど。
 ヒョーゴと別れるのが嫌なら別れなければ良いだろってか
 別れる必要ねぇんだよ、何もしてねぇし、これからもそうならねぇんだから。」

カツオは一つ一つ丁寧にボクの言葉に対して返事を返していく。

「そうだな、解らねぇな。人を売る商人っていうだけで信用がないのは解る。
 でもメイガスさん体調悪そうだったのに血相変えてお前の事探していたぞ。
 …それに 」

本当はこんな癇癪無視しても良い筈だし、行き過ぎた兄弟喧嘩だ。
……。
…………。
カツオはカツオなりに自分の言葉の責任を持とうとしているんだろうか。
だとしたらいままで会ってきたどの奴よりも良い奴だ。

「会えたらこれを渡してくれとも言っていたんだ。
 心底冷徹だとしたらお前が居なくなった時点で探しもしないし、
 自分の保身の為にとっととお前を切り捨てる事だって出来たんじゃねぇの?」

差し出しされたのはいつかブレインから貰った珊瑚の飾りだった。
確か意味があったはずだ、兄弟が仲良くなれますようにといった。
あの時は兄から受け取った時、なんとも言えなくなったりもしたがきっとブレインなりな思いやりだったんだろう。

「道具に何て使われねぇよ。俺が保障するし、
もしそうなった時はちゃんと言いだしっぺの責任を取るよ。」

保障ってどういうことだろう…でも、責任なんて別にとらなくてもいいのにとも思う。
カツオがいまこうやって行動してくれているだけでボクは十分なのだ。

「…だからもう一度だけ信じてメイガスさんと会ってみないか?」

「だって…うぅ…ねこ先生まだいるかもしれないし…」

言い出せばカツオの今までの行動や言っている事が意味がなくなってしまう事もわかっている。
……。
…………差し出されたままの飾りを見る。
兄さんはこれをずっと持っていたんだろうか。
きっとブレインはそれを聞いたら喜んでくれるだろう。
そういえばボクはどうしたっけ。
……嗚呼、ヒョーゴから貰った上着のポケットの中に入れていたんだ。
伸びた手は恐る恐るといったようになっていた。

「うん…。」

出来る限り落ち着いて返事を返す。

「カツオも一緒じゃないとやだ。」

勇気はまだなかった。ねこ先生もメイガスも。
だからカツオが居てくれたら多分帰れると思う。

「そこは大丈夫だろ、うちにゃ気性の荒いうさぎ先生がいるんだぜ。
 ニールが今頃メイガスさん達とうまいことそのねこ先生っつ-うさぎ先生の
 地位を脅かすキャラ被り先生をフルボッコにしてるだろうし
 一緒じゃないと嫌だってのも愚問だなぁ、お前一人で行かせると思ってンの?
 今さっき言ったじゃねーの保障するって。保障すんだから一緒に行くに決まってんじゃん」

カツオは一生懸命ボクをフォローしようとしてくれているのか言動が面白い事になっていた。
つい笑ってしまう。本当にこいつは良い奴だ。

「うさぎ先生…嗚呼、ファーヴニールか。確かに頼もしいのだ。
 本当か?一緒に行ってくれる?絶対だぞ。」

「おう、だから大丈夫だろ。確かうさぎって猫にも食って掛かるしな。
 マジだって、俺基本的にクソガキみたいな嘘はつくかも
 しれねぇけど真面目なとこじゃ嘘つかねぇだろ?」

カツオは酷い事はしない奴だと重々承知しているがつい確認するように言ってしまう。
はっきりと頷くと気が随分と楽になった。

「ずいぶんゴツい兎なのだ、それだったら心配ないな
 …うん、つかないな。カツオはいつも誠実だ。
 だからそれにボクがいつも迷惑をかけても許してくれる、優しい。」

本当に優しいと思う。
カツオはそんなことはないと思っていそうだが怪我をさせた相手にここまでしてくれる事は先ず無い。
あるとしたらやり返すといった事だ。
ぼんやりと考えていると不意に落ち着いたからか改めて空腹を感じてくる。

「…お腹空いた。」

ぽつりとそんな言葉が漏れる。

「おー、腹減ったか。俺も腹減ってんよ、何か食うかー
出来合いのものか菓子しかねぇけど俺の部屋。」

「食べる。…カツオは健康思考なのにお菓子ばかりだな。
ボクがなにか作ろう。」

そう言いながらベッドから降りようとすると、鼻先に良い匂いが掠める。

「…外から良い匂いがする。」

鼻をすんすんと鳴らし、匂いの元を辿るとどうやら外のようだった。

「……確かに何か良い匂いするな。誰かが何か作ってンのか?」

「あまりここの空気はよくないが、平和的なんだな…どれどれ…。」

扉へとのそのそと歩いていこうとすると、背中になにやら色々ぶつかってきた。

「おいばか覗きに行くのは構わんが下もはいてけばか」

「なんでだあー、んあー面倒だあ…」

下を見るとサイズ違いのズボンとベルトだった。
多分このまま外に出ようとしてもカツオに力づくで止められるだろう。
畜生ボクがあと200m育ったら覚悟しておけよ。
そう思いながら大人しくズボンを履く事にした。
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。