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29日目

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痛み止めのおかげでうとうとと舟を漕ぎながら怪我の手当てを受けている時、ジョンが慌てた様子で部屋に入ってきた。

「旦那、問題が起こった。
 カテリーナと劇団の猫が居ない。」

正味カテリーナの行動は金をちらつかせればある程度抑制できるがそれは限度があった。
恐らくねこ先生が逆手に取り倍の金を積み彼女を買収したのだろう。
メイガスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

「……参ったな。」

「元々そういう奴だったからな。
 まあ…旦那の傍に置かなかっただけよかったかもしれんが。」

「どっちに転んでも最悪だ。
 しかしそうか…団長が。」

もし自分の傍にカテリーナを置いていたら彼女はメイガスを殺しにかかっていたのだろうか。
彼女の能力であればこの場に居る全員を手に書けるくらい容易いだろう。
機嫌をとるために"餌"を与えてみたものの、期待に応えられるほど彼女は情や忠誠心というものがなかった様だった。

「どうするのよ。」

「団長が姿を消したって事は下手するとまたナナに接触するかもしれんな。
 くそっあの売女…ッ!」

吐き出すように長く長く息を吐き、執事の名を呼びつける。

「アル、ナナを監視しててくれ。
 団長とはまだ完全に接点は切れてない、また何か仕出かすかもしれん。」

言い方が完全に彼女を疑った発言だが気にする余裕もない。

「旦那様、さすがに考えすぎでは…。」

大きな巨漢に似つかわしくない繊細な表情で執事は心配をするような表情を浮かべていた。
その時、廊下を駆けてゆく音と共に玄関が空けられる音がした。
ジョンが慌てて廊下に飛び出し開いた扉を確認すると部屋の主が居ない。

「まずい…嬢チャンに聞かれてた!」

先ほどの会話を聞かれていたのか、自分の失言にメイガスは酷く後悔をした。





暗がりのお陰でろくに前が見えず、何度も転んでしまったお陰で膝をすりむきタイツが伝線してしまっていた。
冬になりかけた冷たさと血の滲んだ痛みに、はっと我に返り
今自分はなにをしていたのか思い出そうとする。
そうだ、確か"あれ"が借りたアパートで泊まる筈が"あれ"が自分を疑った発言を聞いてしまったのだ。
あれほど自分を大事にしてくれた言葉をかけてくれたにも関わらず、だ

「”俺はナナの味方”だと?!気持ちが悪い!!
 嗚呼、命すらも金にする商人の言うことなんて信用が出来ない!
 死んでしまえ!死んでしまえ!!」

感情の矛先をどこに向ければ良いのか解らず叫びながら力任せに頭を掻き毟るとブチブチと髪が数本抜ける音がした。
髪を酷く乱しながら彷徨っている内、喧騒が耳に届き其方に足を運んだ。
どうやら二人を相手に集団で喧嘩を売っている様で、一人が前線で敵を薙ぎ倒しもう片方はその男のサポートに回っている様だった。
襲われている二人は片方はフードを被っているために伺えないがもう片方はどこか見覚えがあったがよく思い出せない。
既に何人か地面に倒れてはいたが一人見知った姿を見た。
ねこ先生に仕えていた働き蜂という劇団員ではなかったか。
今はもう事切れているらしい、一太刀をまともに浴びた後が無残に残っていた。
見知っている顔はもう一つあった、鰐男だ。
いつもより残忍な顔つきで愉快気に笑っている。
ああ、そうか。兵庫の護衛を頼んでいたのだ、なら自分が囮になればこいつも殺せるのではないか、そんな考えが過ぎる。
行動に移すのはすぐだ、ふらりと物陰から出、大声を張り上げるだけで良い。

「ボクは仕事を失敗したぞ!さあ殺せ!」

「あぁ?」

久しぶりに聞いた鰐男は相変わらず粗雑に聞き返し、血走った目をギョロリと動かし此方を見る。

「はっはっは!!!やっぱあの時からお前甘ちゃんに成り下がってたか!
 ざまあねえな!あの邪魔してやがる面倒くせえ生肉共を片付けたらお前の大事な友達ってのを喰らってやる。
 しかしそうさなぁ!まずお前の手足を食ってから動けなくさせてから見せた方がいいだろうなァ!!」

言うが早く鰐男は巨漢を翻しナナへと突進している、相手をしていた男は他の残党が邪魔になり手が出せずサポートに回っていたフードを被った女が走り出していた。
それは鰐男が獲物を仕留める瞬間口の中に飛び込んだものがあった。
反射的に勢いよく閉じられる口。
口先には黒い尻尾のようなものが食み出ていた、鰐男は何を食べたのかわからないのか目を白黒させそれを吐き出そうとしている。

「嬢チャンやめてよね、心臓に悪いんだけど。」

いつのまに追いついたのかジョンがナナの腕を引いていた。

「なんだこりゃ!味もなんの感触もしやがらねえ!」

ようやくそれを摘み出し地面に叩きつけようとするとその黒い物は勝手に鰐男の手の間から抜け出、地面に着地していた。
よくみればそれは日頃ジョンが連れている黒い犬ではないか、赤い目でじっとナナの事を見つめていた。

「やーい、残念でしたー。」

ジョンはからかうように舌を出し、さあ逃げようとナナの腕を更に引こうとした瞬間、キャンという鳴き声と共にジョンの姿が掻き消えてしまった。
犬の鳴き声なのだろう、その方向に顔を向けると丁度犬の下半身と頭が一人の男の手で半分に千切られていた所だった。
井出達はマントを羽織ったいかにもな貴族に見えるが両の瞳の色の違いや肌色が青すぎた。

「どうも御機嫌よう諸君!
 今宵も良いつきだ、殺し合いという名のゲームかな?賭け事は大好きだ!
 どっちにかけようかなぁ~…んん?しまった!相手がいなかった!」

犬の残骸を投げ捨てた男は先ほどのことなど無かったかのように軽快な口調で述べながら自分の額をペシリと叩いた。
そして改めて深々とお辞儀をしてみせる。

「今回のゲームは皆様のおかげで良い結果が出た!結果的には負けてしまったが利益はあったものでね。」

一同男の言っている意味が理解出来ず唖然としていたが、鰐男は「あぁ?」と声を上げた。

「何がゲームだ勝手に人で遊んでんじゃねェよこの人間風情がッ」

「おすわり」

食って掛かる鰐男に男が片手を挙げいまにも噛み付きそうな鼻先に手を触れると同時、膝の力でも抜けたのかガクリと地面に膝をついた。
男は一同を見回しそこにフードを被った女を見止めると、おや!とわざとらしい声を上げ。

「やあやあ!どうも!"粛清人の傷"は癒えたかな?若い悪魔よ。
 君の親とも言えるアストゥリアスの眷属に"君と粛清人"の賭け事を話したらどんな反応をしたと思う?
 私を殺しにきたよ!返り討ちにしてやったけどね!

 さっきの犬の彼は君達の邪悪なる勝負を邪魔してね、その制裁なんだ。」

犬の上体を抱いていたフードの女はそっと犬を下ろし立ち上がるとその手元に黒い霧が立ち込め始める、何かを握り取り出す素振りをするとそれは鎌へと形状を変形させていた。

「そう、カテリーナを差し向けたのも貴方なのね。私が穫るべき相手を教えてくれてありがとう。」

「女性を痛めつける趣味も嫌いじゃないがいまは君とじゃれあう気はないんだな。」

顎を触りながら男は愉快気にフードの女を見ていたが指をパチリと鳴らすと同時ナナの足元が鳴くなり暗い穴が開いていた。

「嗚呼、いけないなあ。話し相手が居るとついつい話こんでしまう悪い癖だ。
 私はこれをしにきたんだ。
 サービスサービスゥ!」

重力に習いそのまま穴へと落ちてゆく。
空が遠ざかる中、男の笑い声だけは長く響いていた。


***********


翌日。ナナを追いかけるよう、ジョンを出したが彼も帰ってくる事はなかった。
人を使いナナらしき姿を探してみたが見当たらず途方にくれていた。
後悔ばかりが残り、痛む傷を余所に既に探しつくしたというのに周囲を散策してしまう。
誰かが見落としていないか、手がかりでもないかと辺りを見回していると不意にいつも妹と仲良くしている男が声をかけてきた。
カオツと呼ばれている獣人は軽く手を振り近づいてくる。

「どうしたんスか、何か探し物でもしてるなら手伝いますよ。」

寝ていなかったせいか身体が少しだるい、おかげで少しぎこちない笑みになったかもしれない。

「ナナを見ていないかな?
 言いにくい話、ちょっとした誤解があってナナに出て行かれちゃってね。」

「家出ッスか?……所謂思春期…って感じじゃないデスネ。
 俺も探すんで、よければ何があったか話してくれませんか」

躊躇いはあったが彼は妹の事情をそれなりに知っている。
それにToy shop側の人間もある、なにか他に探す方法を知っているかもしれない。
詳細に状況を話しているとカオツは何事か思案するように少し視線を遠くした。
暫くそれを見守っていたが他にも言う事を思い出し。

「そうだ、カオツ君。謝らなくちゃいけないことがあるんだ。
 俺は君に会うずっと前から君の事を知っていた…いや、監視していた、のが正しいかな。
 そのことを踏まえて言うけど、君が怪我をした日にナナは自分の仕事…本来の役割を放棄してるんだ。
 結果的にナナの立場は悪くなったが俺は正直妹が殺人を犯すだなんて良い気はしなかった。
 多分その目もナナの仕業だよね。すまない、でもとても感謝している。」

監視など気分の良いものではないだろう
だがこれは言っておかないと彼の行動に本当に感謝している意味にはならない。
少し間を置き返ってくる返答は怒りもしない意外なものだった。

「………いや、監視うんぬんはどうでも良いんスけど…
 そうか、ナナはあれから殺人をしなくなったのか……

 …ああいや、目の事はあいつにも言いましたけど別に。感謝される事はないですよ。
 立場が悪くなるのに約束守ったのも、殺人しなくなったのもあいつの判断です、
 ……凄いですね本当に、メイガスさんの妹さんは。」

普通自分のプライベートを覗かれれば誰だって怒るものだと思っていたが
彼はそうでもないらしい、違和感に笑みを浮かべたまま眉を寄せてしまう。

「そうだけどね、でもきっかけを作った君にも感謝をしたいんだ。
 褒めているのだからもう少し受け取ってくれても良かったんだが…まあ、うん。
 しかし、許してくれるなら少し罪悪感が拭えたよ、君は優しいね。」

彼なりに何か考えているのだろうか。
暫く見守っていたが元々彼の表情はほとんど変わらないために把握しきれない。
なら別の方向で探ってみる事にする。

「ところで…ナナから聞いたけど『好き』って言われたんだって?
 年頃の女の子に告白されるだなんてカオツ君も隅に置けないね。」

こんな事を言われれば誰だって不思議に思うだろう。
案の定カオツも首を捻り返答を返す。

「……?ああ…はぁ、まぁ言われましたけど……?
 あいつヒョーゴにもっと沢山言ってますよ、
 仲良い相手には大体言ってるんじゃないッスかね??」

成る程、意味はそのままで通っていたのか。
ここはちゃんと訂正しておかねばいけない。

「んー、俺の言いたい事はそういう事じゃないんだけどなあ…。
 確かに君やヒョーゴちゃんの所にも泊まりに行ったりするのは聞くけど
 他では聞かないよ?
 本人にもよく聞いてみたけどヒョーゴちゃんにも相談したらしいよ。
 カオツ君は"特別の方の好き"って結論が出たみたいだし。
 それってつまりカオツ君のことを異性愛としてみているっていう事じゃないかな?」

矢張り返答は難しいものだったようだ。
彼は自分の事になるとてんで駄目なようだった。
ただ事実は事実、別に言ったからといってどうこう責任をとれというわけでもない。
ナナも身体は大人でも精神的にはまだまだ子供だ。
恋愛の「れ」の字も知らないだろう。
あの態度は見ている限り時に子供の遊び相手、時に兄弟、時に家族といったものにも伺える。
ならばなおさらこの二人はこのまま放っておいても大丈夫だろう、ここで彼の勘違いを正したのだから。
だが唯一不安があるのだ。
彼が自分の事に関して興味を持っていないおかげで大熊猫が恐らくは彼を狙っていると言う事に。
メイガスは誰に聞こえるわけでもない独り言を漏らした。

「やれやれ…手間がかかるな。」
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