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category日記

27日

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明日にでも兄を殺しに行った方が良いだろう。

準備を済ませなくてはいけない。
これから行うことは自身が後悔の無いよう、予防線を張ることだ。

その日の精霊協会からの依頼を終え、ファーヴニールへと声をかけ喫茶店へと誘った。
彼は元々暗殺者という立場でもあるが自分の立場を理解してくれている人物だった。
着ぐるみを着ているというのに器用にお茶を啜る様子を眺めていると、着ぐるみの中から声が彼の声が聞こえた。

「悪いが例の件の話だったら、ナナの頼みでも協力できないぞ。」

まさか読まれているとは、余程自分は深刻な表情でもしていたんだろうか。
慌てて頭を振り。

「違う違う、そっちの話じゃあない。
 明日1日だけヒョーゴの護衛を頼みたいのだ。」

改めて自分がねこ先生に釘を刺されている経緯を話すと納得した様だった。

「君ほど優秀な奴には足りないかもしれんが、ボクの全財産。」

缶を取り出しファーヴニールの前にそれを置いてやる。
それは今まで働いて貯めていた分だった。
出来れば誰にも知られることもなく穏便に事を済ませたい。
彼しか頼れる者がいないというのも事実だった。

「む、兵庫の護衛か……大体の事情は理解した。
 引き受けても良いが条件がある。」

ほっと胸を撫で下ろしたが、続く言葉に眉を潜める。

「条件って…なんだよ。」

「俺がもっとも信頼できる仲間をお前につけよう。」

とても自信に満ちた言葉だった。


ファーヴニールとの交渉を済ませ、次は自身の身支度だ。
こういうことがあるからあまり人から物を貰う事はよく思っていなかったが
自分が死ねばこれらは売られたり私物にされてしまうだろう
それはよくない。
特にこのランタンは。
ナナは足りない頭を使いよく考えた。
一番の解決方法を。
彼女の最も信頼する友人に預ければ良いのだ。
ヒナキから貰ったピンキーリングをそれとヒョーゴとお揃いのピアスもランタンの中に入れた。
袋にカオツから貰った髪飾りのリボン。そして道産子から貰った羽カバーも入れてしまった。
コートもあったがあまりに預けすぎると不信に思われてしまうかもしれない。
これだけは逃げ出すときに着ておこうと思った。
ヒョーゴの元へと赴きいつものように陽気な笑みを浮かべ
「トマト祭りに参加する!」と、言い訳を述べ荷物を預かってもらった。
大事な大事な友人にハグをしたがまさかこれが最後だなんて思っている筈もない。
彼女のポケットに手紙を差し入れその場を後にすることにした。





「ナナ?」

夕時になりもうじき暗くなるだろう、帰宅しようとした最中聞き覚えのある声に呼び止められる。
顔を向けると友人であるヒナキがそこに居た。

「やあ、ヒナキ。奇遇だなあ。
 帰りか?」

「うん、そうなんだけど。
 ナナったら今日は随分さっぱりしてるのね。」

言われてみれば普段髪飾りをつけていた分、随分頭がもの寂しい気がする。

「ちょっとトマト投げ祭りに参加してくるんでな!
 トモダチに汚したくない大事な荷物を預かってもらってきたのだ。
 フフフ、楽しんでくるんだぞ~。」

いつもの能天気な調子で語りかけ、純白で触り心地の良い髪を撫でようとして
ただスッカリと忘れていたのだ、"王冠に触れてはいけない"という事を。

「あっ、ナナっ駄目……っ!」

王冠へと触れたことに気づいたヒナキが叫ぶ。
頭上の王冠がくるくると回転しながら魔法の言葉で謡いだし。
2つの旋律を構成すると螺旋状に絡み合い
魔法の呪文を紡ぎながらナナの全身を包見込んでキラキラと輝きだす。
あまりの眩しさに目を開けていられず瞑っているとふと耳に歌が聞こえてきた。

♪【『ナナ』】
♪【赤い翼と強い魂を持った ヒナキの大切な友人】
♪【いつか『願い』を叶える為に】
♪【貴方を構成している魔法の欠片をひとつだけ】
♪【どうか私に下さいな】

「あ…?」

突然のことに理解が遅れ、薄く目を開けると目の前に光と旋律を帯びた小鳥が飛んでいた。
歌はこの小鳥から発せられている様だった。
何故か空中に『Yes』と『No』の光の文字が浮かび上がりナナは逡巡するように視線を泳がせたあと、小鳥へと語りかける。

「なあ、なんだよこれ。
 知らない場所だし…新手のドッキリか?」

余りにも非現実な体験に戸惑い声をかけてみたが小鳥は質問は受け付けない様子だ。
何がどうしてこんなことになってしまったのかわからない。
ヒナキの王冠に触れてしまったからこうなってしまったのだから彼女に関わる事だろう。
出来れば彼女に聞きたかったが今はもう遅い、自分はこの後死ぬのなら興味に負けても良いのかもしれない。
自然と指は『Yes』を押していた。





自分は昔ある劇団に所属していた。
それはグランギニョルと呼ばれ、殺人をショーとする劇団だった。
貴族や富豪をパトロンとしそれは密かな人気になっていた。
魔術商会と劇団はとても仲が悪く度々衝突していた、自分もそれに巻き込まれた一人なのだ。
自分は劇団のある"調教師"に買われた。
彼が調教するものは年端もいかない少女達、元々そういう気があるのだろう。
自分も彼のコレクションになっていた。
意識はあるというのに身体は動かずただ人形のように愛でられる、そんな日々が続いていた。
ある日知らない男が現れ自分に問うた。

"私は今ゲームをしている
だから君も参加しないか
YESだったら一つ頷くだけでいい"

動かない筈の身体が何故か動き、確りと頷いて見せた。
その日"調教師"はとても機嫌がよく少女達が風邪をひかないようにと暖炉に薪をくべていた。
"調教師"の催眠は何故か自分には効かなくなっており、いつものように人形の振りをするだけで"調教師"を騙す事が出来た。
自分はこの自由になった身体をどうするか必死に考えある結論を出した。

"わたしはこのまま逃げることは出来るが彼女達はどうなるのだろう。"

ずっと彼の愛玩になり続けて、大人になったら殺されてしまうかもしれない。
それならやることは決まっていた。
"調教師"に気づかれないように近づき彼の背後へと忍び足で歩いて行く。
機嫌よく鼻歌を歌っている声が聞こえている、一気にいかなくてはいけない。
足に力を入れ"調教師"へと体当たりをした。
思った以上に軽い身体は目の前の暖炉に頭から突っ込み叫び声と焦げる臭いがすぐに立ち込めた。
催眠から解け正気に戻り啜り泣きを始める子供達を説得して逃げようと部屋から出ようとすると、廊下にねこ先生がいつものニヤついた笑みで迎え入れていた。
"調教師"の叫びで様子を見に来た様だったが愉快なものを見れた。
だが団員が減るのは困る、"調教師"を殺したのは誰か。
視線が真っ先に自分に向いた、殺されるかと身を硬くしたが続いた言葉は意外なものだった。

"団員になりなさい。"

このまま拒否してもきっと殺されてしまうだけだろう、それなら承諾してこの子達だけでも逃がせば…
自分も隙を見て逃げればいいのだ。
そう安易に考えているとナイフを握らされていた。

"私達の事を世間に知られては困る、証拠隠滅をしなければならない。
調教師のように養うという選択もあるがお前の給料ではこの数を看る事は無理だろう。"

"ならば団員になったのだから殺してしまいなさい。"

一斉に子供達が泣き叫び元いた部屋へと逃げて行く、逃げ道はなく袋小路だ。
嫌だと拒否をするとねこ先生は困った子だとでも言うように頭を振ってみせ
ナイフを握る手を掴み部屋へと引き擦り込んだ、抵抗しようにも力は強くいやだと泣いて頭を振ってもねこ先生は笑っているだけ。
不意に悲鳴と同時、柔らかいものを刺すような感触がした。





何故突然こんなことを思い出したのか自分でもわからなかったがそれほど呆けてもいなかったらしい。
Yesの文字を選択するとぽんっと文字が弾けて飛ぶと王冠へと吸い込まれて消え。再び小鳥が謡い出す。

♪【Yes!Yes!Yes! 対価は貰った。素敵な欠片を】
♪【魔法の欠片達の中から もしも貴方が選ばれたなら】
♪【最強の力、この世の富や不老不死、とっておきの美貌や才能etc.】
♪【赤い翼のナナ どんな願いもひとつだけ】

「ナナ…。」

ヒナキの声に我に返ると先ほど友人と話した場だった。
一つを覗いて変わらない、一つを覗けば、だ。

「その声はヒナキか?驚いた!
 突然のイメージチェンジとは、どんな手品を使ったんだ?」

面白いと笑いながら声をかけてみたがどうにも相手はそういう気分ではないようだった。
複雑そうな表情で手に持っていた仮面を手渡される。
何故それを渡されたのかわからなかったが自然とそれを受け取ると不思議なことにすぐに解けて消えてしまった。
ヒナキは恐る恐るといったような、子供が親の顔色を伺うような様子で話を切り出す。

「あのね

 ナナの記憶見ちゃった。」

自身の事情を知っているのはカオツとファーヴニールくらいだった。
片方は自分が衝動的に行った事での被害者、もう片方は同業者故だった。
他に言わなかったのはこんな自分を知られれば怖がられてしまうのではないか、巻き込んでしまうのではないか。
そんな恐れもあったのだ。
自分とは対照的に平和に過ごしてきたであろう少女にかける言葉が見つからず逡巡するように口を何度も開けたり閉じたりとして遅く笑みを浮かべる事にした。

「ああ、お察しの通り殺人鬼だ。
 ごめんな、嘘ついてて。じゃあ…さよならだ。」

そう言残し踵を返した、背後でヒナキが何か声をかけているがそのまま足を進めている。
不意に背後から鳥の鳴き声が聞こえ振り返ると、ヒナキの姿が無い。
変わりに居たのは見慣れない男だった。
その手の中には銀の鳥かごが鎮座しており、そしてその中には見知った友人が鳥の姿で収まっていた。

「……ご協力感謝する。赤い鳥のお嬢さん」

「おい、なにを言ってやがる。
 ヒナキを放――」

何故そんな事態になったのか皆目検討も付かなかったが大事な友人を捕らえた様な口ぶりにカッと頭に血が上り相手を睨んだ。
だが友人を見捨てようとしていた自分を思い出し残りの言葉は飲み込み踏みとどまった。
拳を強く握ったまま視線を一度小鳥へと向け。

「ばいばい、ヒナキ。」

そのまま再度踵を返し、早くその場から逃げ去りたいのか自然と足は速くなっていた。
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