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26日目

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正午頃、食事時を終え閑散とし始めた喫茶店で酷くつまらなさそうにテーブルに肘をついたナナの姿があった。

反対に座っているのは猫の獣人だ、品のある動作でコーヒーを一口飲み、ティーソーサーに戻している。
シャム独特の黒い鼻先に皺を刻み笑みを浮かべている、ナナにとっては長年この笑みを眺めていたが一度も良い笑みだとは思った事がなかった。

「…で?」

沈黙を破ったのは仏頂面を決め込んでいたナナだ。
目の前にあるオレンジジュースを行儀悪くストローで氷ごとかき混ぜ、促すような視線を獣人へと投げる。
キシ、と獣人は本人の癖なのだろう独特な笑い声を発した。

「そろそろお前の仕事をしてもらおうと思ってね。」

「兄さんをバラせばいいのか?
 随分かかったみたいだな、念の入用だな。」

勢いよく背もたれに身体を預けるとぼふりと間の抜けた音が上がる。
皮製のソファに溜まった空気がゆっくりと抜かれ
沈んでいく様に身を預けながらぼんやりと天井を見ていると新しい客が来たのだろう、耳にカウベルの音が響く。
視線をなんとなしにそちらへと移すと丁度小柄な女性だった。
髪は長く緩いウェーブがかかっている、よくよくナナが懇意にしている友人に似ている。

「お前そういえば人間の女と仲良くしていたね。」

顔を戻すと獣人は先ほど自分が見ていた人物を見ていた。
嫌な予感しかしない。思わず即答で「仲良くなんてしてない。」と答えたが獣人は愉快気に笑って見せた。

「そうにゃぁ?仲良くないの……。
 じゃあお前がもし仕事が出来なかったら、ウサ晴らしにその人間の娘を狩ってもいいかねぇ。」

勢い良くテーブルから立ち上がるとコップがその衝撃で倒れテーブルをオレンジジュースで汚した。
ウェイトレスが慌てて足を運びにきたが一方的な険悪な雰囲気に推されたじろいでいる様だった。
一応は落ち着きウェイトレスへと謝罪を述べ、掃除をしてもらう。
落ち着いたところでじっとナナは獣人を見つめた。

「仕事は絶対にやる。だからそんな事は必要ない。」

「どうかにゃぁ…?まあ、働きに期待しているにゃ。」

からかうような口調で獣人は述べ席を立つ。
もう一度癖のあるキシ、という笑いを浮かべてから会計を済ませ外へと出て行った。
入れ替わりで着たのは人の身長より飛びぬけた従者だった。
doll*dollは何も言わずジッと席で座り続けているナナを見た。

「ボクが兄さんを殺したら、ここには居られないだろうな。」

ポツリと言葉を漏らす。

「カツオとの約束も破るし、巻き込まないようにしていたけどヒョーゴも巻き込んで。
 これで終わりにしたらボクどうなんだろうな、殺されるのかなあ…。」

半ばぼやきに近い。
視界の端で動く姿があった。
doll*dollはゆっくりと踵を返し扉をくぐりそとへと出て行った。
カウベルだけが鳴っている。


*********


魔術商会に入って随分と待遇はよくなった気がする。
ただ残念なことに自身は脅迫されて劇団との二重スパイになっているという事だ。
この商会に入る前まで、物心ついた頃から自分達は虐げられ差別されてきた。
ある時は実験台にされかかり
ある時は見世物小屋に売られかけ
またある時は家に火をつけられた
拾われたのは路頭に迷い雪の中行き倒れていた最中
井出達の問題もあったおかげで誰一人として近寄ろうとはしなかった。
ただ、魔術商会は違った。
その主は馬車を止め中に招いたのだ。
何者かもわからない自分達を。
魔術商会は自分達がスパイをしている劇団からコネクションを狙われている。


猫先生と呼ばれている悪魔は自分達が追いついたと気づき振り返る。
何事かと首を傾げたが相変わらずその忌々しい笑みを浮かべていた。
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