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category日記

17日目

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表:
唐突な言い出しだった。

「文字教えろ。」

我が妹ながら偉そうな物言いだった。
勉強嫌いの妹がまさかこんな物言いをしてくるとは予想だにせず
メイガスはグラスにワインが並々と注がれ零れている事も気づかず「はあ?」と思わず間の抜けた返事をしたものだった。
正直に言えば学校に行かせていると言うのに文字を読めないおかげで授業はボイコット。
これでは卒業すらも危ういだろう。
ならば少しでも興味を持ってくれれば良いと強力はしたい、したいのだが…。
自分は勿論仕事であまり時間が取れない。
執事であるアルベルトは自分の身の回りの世話やっちょっとした使いがある。
そして最近では浮浪者を拾いその世話で忙しいだろう。
ジョンは自分の仕事の手伝いがあり短時間でしかナナに接する事が出来ない。
それもほとんど彼女の送り迎えなどに当てているが。
カテリーナは恐らくは仕事での金額の上積みを要求するだろう。
かまわないがナイフにしか興味がなさそうな彼女がはたして教える事が出来るのか、正直悩ましい所がある。
最後にdoll*dollだ、あれは応答が『はい』か『いいえ』でしか成り立たないものなので教える立場にはなれない。
自分と面識があり近しい人であれば彼女を教える事が出来るかもしれない。
そう思考を切り替えた時ふと以前ナナが言っていた言葉を思い出す。

「あいつ小難しい本ばっかり読んでるのだ。
 でもたまーに動物の絵がのってる本とかも読んでて、それ読み聞かせてもらったけど面白かった!」

他愛も無い雑談をしている時、ナナがカオツの話題を出したときの物だった。
彼なら教える事も出来るだろうか。そう思い彼に頼んでみると「自分で大丈夫だろうか?」そんな問いをかけてくる。

「俺は仕事であまり時間がとれなくてね、ここで雇ってる奴等もナナの面倒を見るだけが仕事じゃない。
 出来ればナナと面識のある君にお願いしようかなとね。

 ナナから話を聞く限り教えるのも上手そうだと思ったもので。」

その言葉にカオツはあまり納得がいっていなかった様だが、一応と承諾してくれた。
報酬というのも彼らしく『美味しいお菓子』というものでメイガスにとっても気が楽に感じた。



請け負ってからカオツの行動は早くメイガスの部屋に訪れ本を数冊貸してくれないかと頼まれ
メイガスは潔く承諾を返し適当に持ってってくれて良いと返事を返した。
真面目な性格なんだろう、仕事をしながらでも彼が長い時間部屋にいたのは記憶している。
彼が去って言った後、ある程度仕事が終わり寛ぐ視界には綺麗に片付けられた部屋がありメイガスは一瞬ここが自分の部屋ではないのではと動揺した。
と同時にあまりに違和感を覚えたので咄嗟に終ったばかりの書類を、『えい』と部屋にばらまいたがすぐに自分の行動の不毛さに頭を抱える事になった。
夕方、カオツが来客に訪れる頃メイガスは既に応対用のソファでぐったりとしていた。
というのも部屋の『綺麗さ』が気になって仕方が無かったので、つい元のようにならないかと部屋を弄繰り回していたのだ。
結果的に部屋は汚くなった。
以前よりも。

「やあ、カオツ君いらっしゃい。」

仕事柄笑顔を浮かべる事は得意であるからいつものように営業スマイルで客人を招く。
まさかメイガスは既にカオツが自分の世界の文字を覚え、確認をしに来たとは考えもせず。
暢気にお茶はどうかと勧めようとするとカオツは聊か申し訳がなさそうに頭を下げ。

「あー…何かすんません…」

何故か謝れてしまった。
部屋を綺麗にした犯人が目の前にいることにメイガスは気づく事はなく、「えっ?なにが?」と聞き返しそうになったが
口を開く前に続けるようにカオツは言うのだ。

「メイガスさんの世界の文字表作って来たンで確認お願いします。」

「へ?確認?」

タイミングを見失う変わり、予想外の事を言われメイガスは間の抜けた声を上げた。
差し出された半紙を受け取り、中身を見ると丁寧な字で自身の世界の文字が書かれていた。

「いやあ、仕事が速い上に…君は文字がとても上手なんだなあ。驚いたよ。」

素直に感心の色を示しているとカオツは褒められた事が予想外なのか「えっ」と返事を返す。
メイガスも「えっ」と思わず返事を返すとしばしの沈黙が流れ。

「あ、どうも。」

「あ、いえいえ。」

沈黙を破り頭を下げて礼を告げるカオツにメイガスも頭を下げて礼を返した。
そして何事もなかったかのように文字を何度か読み返し間違いが無いか確認を終え、半紙をカオツへと手渡す。

「うん、大丈夫そうだ。君に頼んでよかったよ。
 嗚呼…そうだ、せっかくだからこれを持っていってくれ。」

そう言いながらメイガスはカオツへと装飾がされたお菓子の箱を差し出した。


+++++++++

「よし御前の文字解ったぜー教えてやろう」

「ボクのモジ?」

文字の勉強を教えて欲しいと言ったその日の内にカツオはボクへと声をかけにきた。
カツオのだらしなさっぷりが移ったのかロビーのソファでだらだらとしていたが自分で言った事だ、誠意を持って行動に移さねばいけない。

「本当か?ヒョーゴに手紙かけるかな?」

重大な問題を指摘しまったらしい、カツオはよくある「なん…だと…」と漂白剤みたいな台詞を吐き動きがぴたりと止まってしまった。
一体どうしたんだろうか。見守っていると徐にカツオは天を仰ぎ。

「あ゛ー…そういえばそもそも何を覚えたいのか聞いてなかったじゃねーの。馬鹿だ俺俺馬鹿だ」

なるほど、わからん。
どうやらカツオは自分の失態に気がついたらしい。
だがこういう時カツオは切り替えの早い奴だ、すぐに続けて言葉を口にする。

「すまん、ちょっとヒョーゴの方の文字に素材合わせてくるわ。」

「んん?ボクの世界の文字とヒョーゴの世界の文字って違うのか?」

聞いてばかりだがボクは文字というものをほとんど知らないから聞くしかない。
袖を軽く引っ張るとカツオは手短に世界には色々な文字がある事を説明してくれた。
文字が違うのによくコミュニケーションがとれるもんだ。
あ、でも実際ボク達コミュニケーションとってた。すごい!どうにでもなるもんだな!
しかしもっと凄いと感じるのはその日のうちにボク達の世界の文字を学習してきたカツオの脳みそでもあるのだ。
カチ割ったら中身がギュッと詰まっているに違いない。
甘党でいっつも寝てる奴だけど良い所は特化しているんだなといつものぼんやり顔のカツオを見上げてそう考えた。

+++++++++

最初は書き取りというものからから始める事になった。
ペンなんて落書きくらいでしか握らないのでカツオに握りやすい形を教えてもらった。
以前スプーンの持ち方をそれとなく教えてもらったけれどこいつは教える事に関しても上手いのかもしれない。
お手本の文字を真似て書くんだがこれがなかなか難しい。
ボクが覚えているものは「ひらがな」というものらしい。
とても初歩的なものでヒョーゴの世界はその他にもあと2種類含めて文字を書くという。
なんでそんな面倒臭い作りにしたのかわからないが、曰く文化だから仕方が無いと。
カツオに文字を一文字書きながら声に出すと覚えやすいと教わり、既にノートの半分が埋まった。
…しかしこんな沢山の文字一度に覚えられるんだろうか。
まだまだある文字の山に少しボクの心がくじけかけたがヒョーゴに手紙を出すためだ、頑張るしかない。
がんばる、しか…。

「『わ』と『ね』の区別がつかねー。
 なんだよ片方なよなよしいにもほどがあるぞ、女の子か。」

一通り文字の書き取りが終わり、次はカードによる読み取りの訓練だったが
どうしても『わ』と『ね』の区別がつかず思わずそんな愚痴を漏らしてしまう。

「ばっか御前、『ね』は女の子じゃねーよ『ね』は寧ろこう見えるだろ」

そういいながらカツオは赤毛の羽ペンを取り出し何事か書き出す。
ボクは机につっぷし、書いている手を眺めていたが見せられたものに、ははーんなるほどなーと思わず声をあげた。
多分それは『ね』の文字だと思うんだがそれを黒く塗りつぶし、鎮座ましました猫がいた。
『ね』の書き終わる部分のくねってはみ出た部分はねこの尻尾というわけだ。

「……な?」

「その発想はなかったわー。」

ある意味スゲーぞ。だが『ね』がこれなら『ねこ』でもある。
印象がついたおかげで覚えやすくはなった。
ねこの絵を眺めていたがふとあることが気になり、書き取りで書いていたノートを取り出し手本やカードのものと比較してみる。
手本にしていた文字と読み取りに使っていたカードの文字は同じ筆跡なのだ。
自分の書き取りと比べてみるとわかるがボクの文字は全然安定せず小さい文字や大きな文字が沢山。
すんすんと匂いを書いでみた、インクの匂いがする恐らく手書きだろう。

「これ手書きか。カツオが書く文字ってスゲー綺麗なんだな!」

「えっ」

褒めたつもりだったんだがあまり伝わらなかったらしい。
カツオが驚いた反応を見せた様子にボクは言い直すように。

「カツオの文字が好きと言ってるんだ。」

するとカツオはいきなり噴出すように緩く笑いやがった。
変なこといったつもりはないんだけどなあ…。

「おお、有難う。ってか御前らやっぱ兄妹だなぁ。」

でもちゃんと意味も伝わっていたようでよかったのだ。
ただボク達がやっぱり兄弟ってなんだ?
…と、聞こうとも思ったがカツオが表情を出して笑うという事はとても珍しい。
ボクはついついその笑みを長続きさせようと笑い返すのだ。


裏:
…数日前…

世界は罪人で溢れ帰り、略奪や争い事が多い、これほど悪魔にとって良い餌場は無いだろう。
勿論ドラクロワもその一人だ。
知人であったシエラと協定を結び、彼らが争う事で不幸を起こし見返りにドラクロワは彼らに物資を提供する。

「はよ、リア充爆発。はよ。」

「なんで爆発せにゃならんのよ。」

ハイドの頼みを聞いたドラクロワの第一発言に意味がわからないといった様子で困惑の色を示す。

「はぁぁぁああああ???
 ”女の子に服を上げたいから可愛いの用意して”とか言っちゃった子はどの子ですのー?」

わざとらしい動作で耳元へと手をやるとドラクロワの耳についた玉のイヤリングが弾くように揺れた。
勢いに押され一歩退いたが、聞かれたのなら仕方が無い。

「俺だけど。」

素直に返すとドラクロワは膝から崩れ落ち地面に両の手を付き嘆いた。

「無自覚ヤローめ!爆発しろォ!!」

はあ。としか生半可な返事が出せない。
足元で跪くドラクロワは顔だけ捻りチラちらりと見上げてくる。

「……で、なんであげる経緯になったんですの?」

「んー、そいつちっちぇーんだよ。
 で、俺達がいた世界よりここってンな平和じゃないじゃん。」

「だから相応の事はしてあげたいと?」

「そ。」

短く返事を返すハイドにドラクロワはふぅむと唸り何事か考えている様だった。

「貴方にとってその子はなんなんですの?」

「よくわからん。」








「ところであたくしにそれをゲロった意味はご理解頂いております?」

ハイドはその言葉が理解できなかったが、ドラクロワが作った服を無事ベリィへと届ける事は出来た。

その衣類に幻術がかけられていることなど知らず。

……………


それは丁度彼女に自分が触れる事で命を食べてしまうというのを説明した時の事だった。

細い肩を撫でるように上質な上着が滑り落ちてゆく。
布地が隠していたのは鉄製の細長いもの――銃だ。
ベリィはハイドを見て『ベルゼビュート』と驚きの声を上げた。

「ノトリア・カリストを飲み込んで消滅した筈………
 どうしてこんなところに……
 …………擬態された人間を解き放たないと……許して下さい……」

聞きなれない単語と異様な様子にどうかしたのか、そう問いかけようとしたが
銃のセーフティーを外す動作に躊躇いは無く、彼女が本気で自分を殺そうとしている事は容易に知れた。

銃声が響き渡る。

硝煙を上げる銃口を鞘が咄嗟に狙いを逸らしたが、変わりにコートに穴が開いてしまった。
それよりも彼女に上げようとしていたケーキを取り落とし地面へと落ちている、もう食べれないだろう。

「なんなんだよ突然撃ってきて、一体どうしたんだよ。」

「………。この世界に影響が出る前に、決着を付けないと…」

ゆらりと動く体。声はまるで届いていないようで、返事は無い。
トリガーに掛けた指にはほとんど迷いというものが感じられず、硝煙がぼんやりと周囲に立ち込めた。

機関銃の先端が熱で焼ける。落ちたケーキには一瞥もなく、半歩その足が前へと歩み出た。


明らかにベリィの様子はおかしい、視線は定まらずどこか遠くを見ている。
彼女の肩に手を置こうとすると、それは鋭く払われた。
予想をしない反応に驚き、その隙をつき距離をとられる。ハイドは彼女の”敵”でしかないようだ。
銃口が上がり自分に狙いを定めている、身を翻し遮蔽物へと滑り込むと同時に発砲音が再度響いた。

「どうなってんだこりゃ…。」

ベリィはハイドを別の物として認識している様だった。
ハイドが聞かない単語、そして彼女が攻撃的になるということは『彼女の世界に存在する何か』と錯覚している事になる。
出来れば彼女に傷をつけずに穏便に事を済ませたいがいま持っているものは刀くらいしかない。
それにベリィとは距離をとってしまった、銃を持っている彼女を相手にするのはリスクが高すぎる。
壁越しに一歩彼女が近づく足音が聞こえる。
暫く黙ってはいたが深く息を付き、刀を引き抜いた。

「腹括るか。」

良く手入れされた鋭い刃が顔を覗かせる、持つのは鞘だけだ。
勢い良く飛び出し様、彼女へと鞘を投げつける。
咄嗟的にベリィが避けハイドにに銃口を構える頃には彼女の目の前へと飛び込んでいる。
ベリィの撃ち放つ弾丸が肩を打ち抜き黒い液体が肩口から吹き出、痛みに顔を歪めた。
銃火器が硬い音を立てて転がる。
小さく細い身体を押し倒し、腕を押さえ込み胴へと乗り上げればほとんど彼女の動きは抑えることが出来た。

「おい!落ち着けって…暴れんな!」

抵抗される度に撃たれた傷が痛み、気を許すと押さえていた腕の力が抜けてしまいそうだった。
時間もない、それならば”彼女を動けなくする程度に弱らせるしかない”。
ハイドは人の命を触れる事で食べる存在だ。見極めさえ出来れば容易な事だ。
苦しまない程度に細い首に手を添え握ると自由になった手がそれを引き剥がそうと強い力で掴んでいる。

けれども一向に彼女が弱る様子がない。

「なんだこれどうなっ……!」

普通の人間であれば直に弱る筈がベリィは”彼の食事すら受け付け”ない。
片手を自由にさせていたのが仇となったようだ
運悪く撃たれた傷を殴られ怯んだ一瞬を突かれ胴を蹴られる。
無様に転び肩口を押さえ響く痛みを耐えるのが精一杯
起き上がるベリィは落とした銃を広いハイドの頭へと銃口を向けている。
だが不意に糸が切れたように身体の力を無くし、崩れ落ちた。
それを背後から支えたのはドラクロワだ。

「女の子に手をあげちゃあいけませんぞー。」

場違いなほどに能天気な声を上げ、気を失ったベリィの手首を掴みゆすっている。
手を振っている様だった。
上体を起こしながらハイドも手を振り替えし。

「なんつーか…アリガトね。」

「いえいえ、あたくしも色々都合がありましたのでお気になさらず。」

「都合?なんだそれ。」

「此方の話ですわ、うふふ…せっかく作った洋服が汚れとる。」

意味がわからないといった様子でハイドは不思議そうに聞いたが
ドラクロワは小さく笑ってみせ興味を衣類へと移した。
埃を払ってやろうと何度か彼女の衣類を叩く拍子、淡い光がはじけたのを見た。

「どうしましたの?」

「ああ、いや。いま光らなかったか?」

「まっさかぁー!ハイドちゃんったら怪我したからそう見えちゃったんじゃないですの?」

ショック的なものだったら可能性はある、素直に納得していると意識を失ったまま動かない小柄な身体を抱かせられた。
ベリィが落としていた上着も取り、同じ動作で汚れを払いそれも着せてやった。

「よーし、完璧じゃー。
 女の子は飾るに限りますな!」

どや顔のドラクロワにありがとねと礼を告げ立ち上がる。
片腕はほとんど使えないので片手で抱いている上体だが長くは抱き上げていられないだろう。
早めに落ち着ける場所を探した方が良いかもしれない。
そんな様子を悟ったのかドラクロワは、あ!と声を上げ。

「そういえば休憩するにぴったりの場所を見つけましたの。
 薔薇が咲いている園でベンチやテーブルがありましたわ、きっと元は公園だったのでしょう。」

「おー、そいつはいいね。ありがと、そこに行ってみるわ。」

簡単に行き方の説明を聞き歩き出す背へとドラクロワは見送り手を振ってやる。
そしてある視線に気づき、その方向へと向き愛想良く笑って見せた。
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